2005年の2nd『Laughin’』収録の楽曲。画像はアナログ12インチのジャケットです。
2000年代は、バンドQYPTHONEがドイツデビューだったこともあって、よくヨーロッパツアーに赴いていました。
ツアー初期、古いお城を借り切って夜じゅうフロア化させるというオーストリアのとんでもないフェスに参加した時の出来事です。
僕らのライヴが終わると次のDJが、メロディも派手な構成もないインストのミニマルハウスを淡々とつなぎ始めました。すごく地味に、けれど丁寧に。
派手なライヴの後だっただけに、オーディエンスは他の盛り上がっている会場を求めて三々五々し、静かになった会場にはストイックな4つ打ちだけが響いていました。
ライヴが終わった僕らも、ホッとしながら乾杯しつつ、オーディエンス同様に他の会場のライヴなどを観に行ったりして過ごしていました。
そして4時間ほど経った朝方。元の会場へ戻るとそこには、フロアに入りきらない大勢のパーティーピーポー達が大盛り上がりで踊りまくる光景が広がっていました。
「あー、さっきの地味なDJから次の人にバトンタッチしたのかな?」
と思いながら会場に入ると、なんとさっきのDJが、4時間前とまったく変わらずに淡々とミニマルハウスを繋ぎつづけているではありませんか!
有名なキラーチューンも、ドラマチックなエフェクトも全く使わず、淡々とストイックに4つ打ちを繋げるだけでこんなにもダイナミックな空間を作り出すのか!と。
この夜が僕のDJの原体験であり、DJにおける唯一かつ最大のモチベーションとなりました。
もちろん帰国後すぐに、その原体験に自分のDJスタイルをアジャスト。
その後のQYPヨーロッパツアーでも必ずライヴ後にDJタイムを設け、最低でも2時間のセットをミニマル中心でストイックに繋ぐことにしました。
そしてその数年後、日本ではキラーチューン中心の一大「誰でもエレクトロDJ」ブームが訪れました。
テクノポップのチャート曲が響き渡るフロアに、少なくとも自分にとっての刺激はすでに存在しませんでした。
僕のDJとしてのモチベーションが終焉を迎えると同時に、あの夜に体験した身震いするようなストイックさは、自分のライヴ演奏によっても表現できることにも気づきました。
今回のベスト盤では、以前DJでよく繋いだ「Love Wing〜北の国から」への大団円を再現すべく、次曲には曲間なしのインテンポで繋げています。