オルビス「アクアフォース」CM使用曲として、2010年に制作した楽曲。
それまでCM曲は数多く手がけましたが、自分のボーカル曲が使用されたのはこの曲が初めてでした。
この楽曲トラックのテーマは透明感。音数は極力少なめに、歌にも楽器にもエフェクターやプラグインを極力使わず、楽器そのものが持つ音の質感を最大限活かすように意識しました。
弦楽カルテットは天井の高いスタジオで録音。その部屋鳴りの成分を活かして、ノンリバーブでも充分に深みを持たせたマイキングで録音しました。
2コーラス目から登場する3度ハーモニーのフリューゲルホーンは佐々木史郎さん。静けさと存在感を併せもった素晴らしい演奏に、レコーディング時から涙がこぼれそうに。
実はこの曲で最も音量のあるスネアドラムの音は、イコライジングで高音成分を上げるのではなく、かくし味程度に生のハイハットを足すことで存在感を出しました。もちろんリバーブもオフにして、耳のごく近くで聞こえるようにしました。
そのようにして得た一つ一つの音のアタックをさらに粒立ちさせるために、ウラ拍のスネアのタイミングでピアノ、ギター、ベースの余韻をばっさりカットしています。スネアを合図に毎回一瞬の静寂を作って、自然と言葉に耳が向くよう取り計らいました。
こうしてかなり細かい手間をほどこした結果、静かなたたずまいにもかかわらず強いオーラを持った楽曲に仕上がったと思います。
思いのほか存在感が強かったためか、オリジナルアルバムに収録するには他の楽曲となかなか馴染まず、僕名義のアルバムとしては今回がめでたく初収録と相成りました。
この楽曲を収録したコンピレーションのタイトルは、そのものズバリ『歌うピアノ男子』。タイトル案打合せの時、あまりのインパクトゆえにスタッフ全員が一斉に戸惑った顔になったのも、今となっては良い思い出です。
参加していただいたアーティストの面々は、僕が尊敬してやまない人たちばかり。
川口大輔、古瀬智志、さかいゆう、ナカムラヒロシ(i-dep)
ミトカツユキ、森大介、矢舟テツロー、渡和久(風味堂)
この編纂を機に親交が深まった方々も多く、その意味でも思い出深い1枚になりました。
続編のアイデアとして「歌うギター女子」「海の向こうのピアノ男子」「ビッグバンド女子」などもあるのですが…やっぱりタイトル戸惑います?