Column

【ライヴレポート】プレミアムワンマンライブ@谷中「カヤバ珈琲」

「中塚武 プレミアムワンマンライブ」
2014年8月8日(金)@谷中「カヤバ珈琲」ライブレポート



ソロデビュー11年目を迎えた中塚武が「初心に戻って音楽を届けたい」という思いを込めて企画した『プレミアムワンマンライブ』の第2回となるライブが、上野桜木交差点角の「カバヤ珈琲」で行われた。
今回は、事前に観客から募集したリクエスト曲をなんとくじ引きで演奏するなど、満員御礼の当夜でしか聴けない、まさにプレミアムなライブが繰り広げられた。

いまも下町風情が残る台東区・谷中に、大正時代からたたずむ木造2階建ての長屋。当時の趣をそのままに「カバヤ珈琲」として生まれ変わり、街の憩いの場として親しまれている。
年季の入った建物に足を踏み入れると、昔にタイムスリップしたかのような空間が広がっていた。



入り口に設けられた小さなステージに、石垣健太郎(ギター)、石川周之介(サックス)、そして中塚武が登場するとすぐに、アコースティックギターのやわらかな音色と、ループエフェクトによる幻想的な多重コーラスから始まる「トキノキセキ」で幕開け。つづいて、ジャジーで小気味よいリズムの「涙に濡れた夢のかけら」へと流れ、テンションを徐々にあげていく。

3曲目の「冷たい情熱」を歌い終えたあと、中塚は「プレミアムワンマンライブ」を始めたきっかけについて、こんな話を始めた。

「インターネットやSNSのおかげで、音楽を作る側(アーティスト)と聴く側(ファン)の垣根が取り払われて、対等な立場になってきたように感じているんです。みんなのツイートを見てても、世の中に面白い人ってこんなにいるんだ!って思ったり。僕らは音楽を作っているだけの“音楽屋さん”なんです。八百屋があって、魚屋があって、肉屋があって、音楽屋がある、みたいな(笑)。魚屋さんは肉屋に肉を買いに行き、肉屋さんは魚屋に魚を買いに行くでしょう?その中で、音楽屋が、時々音楽を出して、それをみんなが聴いて気に入ってくれて、僕も他の人がやっている面白いことを一緒に楽しんで……。そういうのって商店街みたいだなって。それをもっとリアルなかたちでやりたと思って、このライブを始めたんです。」

親密さを覚えるような距離感。当日の会場の「カヤバ珈琲」という場所が、そんな中塚のいまの思いをよりリアルに伝えていた。トークの合間には、「もうアーティストじゃなくて良いんじゃない?」と”脱アーティスト宣言”まで飛び出し、会場から大きな笑いが起こるなど、音楽屋・中塚武の心意気を感じるワンシーンだった。



その後、「TAKESHI LAB」から無料配信されたばかりの新曲、「あの日、あのとき」へとつづく。実はプレミアムライブでは来場者全員に毎回、その日のために用意したオリジナルCDを「おみやCD」として持ち帰ってもらうという、なんとも贅沢すぎる特典があるのだ。
今回は「あの日、あのとき」のトリオヴァージョンが収録されていた。これもプレミアムワンマンライブならではのうれしい特典だ。

ライブ前半の〆は、「すばらしき世界」で盛り上がり、休憩をはさんで後半へ。



後半戦は、初の試みとなる「リクエストコーナー」を中心に展開していく。
1回目のライブのときに募ったリクエスト曲をリクエストボックスに入れて、それをなんと無作為にピックアップするという演出に、観客の期待もふくらんでいく。

1曲目に引き当てたのは、『Lyrics』にも収録されたフリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」。
つづいて、中塚お得意のサザンオールスターズのナンバー「みんなのうた」をピックアップ。ここで石川は、サックスをフルートに持ち替え軽やかなサウンドを響かせると、会場も一気にハッピーな空気に包まれていった。
リクエスト3曲目に引き当てた『Kiss & Ride』収録の「Love For Two」を歌い終わると、中塚が思わず叫んだ。
「この企画の緊張感すごいね!プレミアム以外では絶対にやらない!」
「石垣さんも澄ました顔をしてるけど、すごい汗かいてるし(笑)」
まさに彼らの、このライブにかける本気度を感じる、熱いパフォーマンスだった。

本編ラストを「Make Her Mine」で締めくくったあと、大きなアンコールを受けて3人が再び登場。「リクエストもアンコールくじでやってしまえ!」と、リクエストボックスから引き当てた曲、荒井由実「ひこうき雲」を4ビートヴァージョンで歌いあげた。会場を包む歓声と惜しみない拍手のなか、第2回プレミアムワンマンライブは大団円を迎えた。

(text:川崎圭子)


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