(つづき)
さて、もうひとつの「音楽を通して何かを伝えたい」場合。
たとえば歌などは歌詞もあるのでこちらになりますよね。
でも、いくらメッセージがあるからと言っても、何でもかんでも音楽に乗せれば良いってものでもありません。陳腐なメッセージを乗せた曲は聴き手の時間を奪う時間泥棒でしかありません。
大切なのは、
その伝えたいことを伝えるのに、音楽でなくてはならないのか?
その伝えたいことは、音楽以外の方が伝わりやすいのではないか?
という点を、まずはよく吟味してみることです。
「音楽そのものを伝えたい」場合の純粋な音世界とは違って、こころ、身体、環境、経験、知恵、良心、願望、欲、愛情、、、とにかく自分自身の人間性を総動員して吟味しなければなりません。
●安易にエコや戦争反対を歌うよりも、NGOボランティアに入って活動した方がよほど世の中に広く深く伝えることができるかも知れません。
●政治や社会問題を歌うよりも、政治家になって選挙に立候補した方がよほど分かりやすい活動かも知れません。
●自分の思いをまわりくどく歌に乗せるよりも、毎日のブログで同じことを書いた方がストレートに伝わるかも知れません。
●大きな愛を仰々しく歌う時間を使って、身近にいる大切な人に「ありがとう」と言ってあげる方が愛を広めるかも知れません。
本当に音楽でないと伝わらないのか?
を、厳しく自己批判することが大切なのですね。
その吟味を経てはじめて、音楽に乗せて何を伝えれば良いのかが自分の中でハッキリしてきます。
そうやって「音楽に乗せて伝えることが最もよく伝わるはずだ」という確信が持てた時に、初めて筆を動かせば良いのです。
というよりも、もうそこまで吟味ができた段階ならば必然的に、楽曲は8割がた完成しているようなものです。あとは筆が勝手に動いてゆくのですね。
音楽とメッセージが溶かし込まれるように一体になれば、それはもう立派に、
「音楽でなければ伝えられないこと」
ですよね。
この吟味プロセスを忘れなければ、音楽を作る時に「出来ない・・・(T_T)」などと悩むということはほぼ100%無くなります。
作るか作らないかをよく考えて、作ると決まったらほぼ自動筆記状態。
もし制作中に筆が止まったり、スランプ状態に陥ることがあったとすればそれは、
「音楽以外のメッセージを、わざわざ無理に音楽に乗せようとしている」
のかも知れません。
音楽でないと伝わらないことを伝える
これこそが、音楽「で」何かを伝えたい場合の生命線なのですね。