過去に幾度となくイベントをおこなってきた古巣、渋谷・セルリアンタワー内のライヴ&ダイニングクラブ『JZ Brat SOUND OF TOKYO』。
約1年ぶりにこの場所に戻った中塚武の、実はこの場所では初めてというワンマンライヴが3月20日の夜に開催された。
少し照明を落とした広いフロアと印象的な赤い壁、天井高のあるスタイリッシュな空間。足を踏み入れたと同時に、これから始まるライヴへの期待感で胸が膨らむ…そんな場所だ。
ステージ上にはグランドピアノ、ドラムセット、ベースが設置されており、これまでのプレミアムワンマンライヴとはひと味もふた味も違う、大きな存在感を放っている。
プレミアムワンマンライヴではおなじみの石垣健太郎(ギター)、石川周之介(サックス&フルート)に続き、鈴木郁(ドラム)、寺尾陽介(ベース)が登場。そして、軽やかにステージへとあがる中塚。メンバー全員が黒シャツ&白タイのモノトーンで決めている姿はいつになく新鮮。ピリっとした空気が超満員の客席にもびしびしと伝わってくる。
まずは華麗なドラムワークを響かせての先制パンチで、いきなり観客を圧倒!無料配信された「律動(リズム)」の変拍子ビートが、冒頭からオーディエンスを中塚ワールドへと一気に引き込む。
続けて『TAKEAHI LAB』で無料配信中のナンバー「苹果」では、メロウな声に力強い音が加わり、器の大きさを感じさせる楽曲を披露。
ここで、中塚から今後の活動報告を兼ねた挨拶が。
「昨年の夏からスタートした、アコースティックセットでのプレミアムワンマンライヴもひと区切り。これまでプレミアムだった企画をすべて『当たり前のこと』にするため、プレミアムという冠をあえて外しました。そんなワンマンライヴシリーズを『JZ Brat』にて再始動します!今日はその記念すべき第一回。来てくれて本当にどうもありがとう」
中塚らしい素直な言葉に続き、今回のおみやCD収録の「Johnny Murphy」を披露。曲にちなんだJZ Bratオリジナルカクテル「Johnny Murphy」を紹介するとともに、ライヴは中盤へと突入する。
その後、ルーパーを効かせた「トキノキセキ」では、楽器群の超絶技巧ともいえる絶妙な掛け合いに、これ以上ない熱気で会場が包まれる。
続けざまに放たれる「愛の光、孤独の影」「すばらしき世界」に至っては疾走感溢れるサウンドが大炸裂!
オーディエンスを完全に魅了するアップテンポなリズム。熱気を帯びた空気が、観客の手拍子とともにたちまち会場中に満ち溢れ、圧倒的な盛り上がりのなか1stステージは終了した。
今回のワンマンライヴからは、DJとして高橋マサル氏も参戦。
オープニングはもちろん、2ndステージまでの休憩の合間からイベント終了まで、コンセプチュアルで心地よい音の世界を創り出し、会場全体をひとつにつないだ。
2ndステージになると一転、メンバー全員がパリっと爽やかな白シャツと黒タイ姿に。
中塚はピアノを前に、そして榎本裕介(トロンボーン)、茅野嘉亮(トランペット)、竹村直哉(アルトサックス)のホーンセクションが新たに加わる。
サウンドは格段に華やかさを増し、歌い上げる声も力強く響く。
「It’s Your World」「虹を見たかい」では、4管とは思えぬほどのぶ厚いホーンセクションを鳴り響かせ、オーディエンスを瞬く間に圧倒していく。
続く「冷たい情熱」では、変拍子リズムに合わせた緊張感のあるフリューゲルのソロがストイックに響きながら、その空気感を保ったまま『白雪姫』の「ハイ・ホー」へと続く。昨年リリースのディズニー名曲のジャズカバーアルバム『Disney piano jazz “HAPPINESS”』からの1曲だ。
痛快かつスタイリッシュなアンサンブルが次々と繰り出され、会場全体はまさにヒートアップ状態。その興奮冷めやらぬまま「○の∞」から、本編ラストの「Countdown to the End of Time」と続く。
ビッグバンドを彷彿させる大迫力のステージにヒートアップしていく満員のオーディエンス。
たたみかけるようなアップテンポなリズム、魂を突き動かすブラスサウンド。ジェットコースター並みに展開していくハイスピードなステージは、最高潮の盛り上がりをみせながら、本編の締めくくりを迎える。
鳴り止まぬアンコールに応えて「Your Voice」を披露。スケールの大きなメロディと歌詞を感情ゆたかに歌い上げる中塚のヴォーカルは、記念すべきワンマンライヴのラストを華やかに飾る。
特別な夜の贅沢なステージは、圧巻のうちに幕を閉じた。
次回のワンマンライヴ@JZ Bratは6月14日に開催決定!
そして待望のリクエストコーナーは『新曲三題噺』として、なんと「リクエストされたキーワードから新曲+オリジナルカクテルを作ってしまう」という超強力コーナーにパワーアップして復活するとのこと。
どんなパワフルなステージが繰り広げられるのか、大いに期待しながらその日を待ちたい。
(text by 青野ゆう / photos by 菊池陽一郎&目良夏菜子)