Column

【のたり松太郎】

好きなマンガがあると何周も何周も読んでしまう僕ですが、この「のたり松太郎」もそう。

作者はちばてつや。「あしたのジョー」「あした天気になあれ」を描いた方ですね。もちろんこの2作品も読破しましたが、「のたり松太郎」はもう別格の面白さ。



とにかく主人公の坂口松太郎がとんでもない。

乱暴者で自分勝手で怪力の持ち主。

よく人を殺さないで済んでる、と言うようなエピソード連発です。もちろんマンガだからこそなのですが、それにしてもよくもここまで乱暴な男を描けるものだと感心してしまいます。


「気が荒くて力持ち」って・・・人間として一番近寄りたくないタイプ。

僕なんてたぶん2秒で絞め殺されちゃいます。



また、タイトルに「のたり」とついているだけあって、とにかく怠け者。

マンガで怠け者を描くとこんなにもダラダラと冗長になるのか、というようなページの無駄遣いっぷり。

何ページ進んでもこの男は稽古すらせず、1話分まるまる呑気に釣りなどしているのです。30巻目に至っては、1巻まるまるサボって競馬にうつつを抜かしたりするし。

ここまで来ると、主人公がサボってるんだか作者がサボってるんだか分かりません。


そのうえ、ときどき突発的に、相撲とはまったく関係ないストーリーで松太郎が大暴れしたりするので、とにかく読み手を混乱させるマンガであることは確かです。



でもね、セリフにもコマにも描いてはいないのですが、最後まで読んで分かったことがありました。

それは、彼が全36巻中ほんの数回だけ見せた頑張りが、すべて他人のためだったということ。

一度読んだだけでは分からないほど、あまりにもさりげない描写なのです。

そういうさりげない漫画、僕は大好きなのですよ。

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