「いま」を生きる同世代の日本人が抱く等身大の歌詞世界を極上のポップスへと昇華した「Lyrics」から3年ぶり、通算7作目のオリジナル・アルバムが完成しました。多彩な音楽を自在に横断し、研ぎ澄まされた感覚が掴みとった斬新なリズム、先鋭的かつリッチな存在感のある音、新しい感覚をまとった日本のポップ・ミュージック。エレクトロニカやヒップホップなど様々なジャンルのサウンドを吸収し、世界同時進行で新たな可能性を模索し続けている最先端のジャズシーンにも通じるアグレッシヴでスリリングな新しい音のカタチ。幾何学模様のような縦横無尽に躍動する音の海の中を、日本語の響きのユニークさを生かした呪文のような言葉が降りそそぐリードトラック「JAPANESE BOY」ほか、電子音と生楽器との賑やかなアンサンブルは、その難解さを感じさせず、ひとつひとつの音色の瑞々しい響きが聴くたびに驚きを感じさせ、独自の世界観を極めたサウンドスケープは中塚武の真骨頂ともいえる音世界です。
今作も作詞、作曲、編曲、管弦オーケストラアレンジ、プログラミング、演奏(ピアノ)、歌唱、コーラスに至るまで、全てを本人自らが担当し、ゲストミュージシャンには、パーカッションに松岡“matzz”高廣(tres-men/quasimode)、ストリングスにNAOTO、ブラスセクションには、本田雅人(sax)、佐々木史郎(trumpet)、エリック・ミヤシロ(trumpet)、Luis Valle(trumpet)、中川英二郎(trombone)、五十嵐誠(trombone)他、現在の日本のジャズ界の実力派ミュージシャン達が参加し、華を添えています。ミックスは栄田全晃氏(CRICKET STUDIO)、マスタリングは前田康二氏(Bernie Grundman MASTERING)が担当、アートディレクターとして杉江宏憲氏(CRYPTOMERIA)を迎え、より深い作家性の成熟を見せた作品となりました。
アルバム制作が決まってからも、わりと長い期間、このアルバムの軸になる楽曲を作りあぐねていました。
コンセプト的には、カオスで、ナンセンスで、新しくて、しかもカッコイイ曲。思いつきを言うのは簡単なんですけれども、作るのは結構しんどい。
いざ作ると決めてからは、自分に身についてるスキルや経験をあまり大切にせず、バランスを大切にせず、ルールを守ろうという意識も大切にせず、荒削りな気分のままで、半日ほどで曲を書きました。
今回のアルバムは「直感と初期衝動」を大切にしたかったので、最初に下りてきた楽想はできるかぎりそのままに。
歌詞もナンセンスで。
一聴すると何を歌っているか分からない、意味のないような歌詞にしました。
色々とナンセンスなアイデアは浮かんだのですが、日本語のルーツともいえる祝詞をメロディに乗せてみると、驚くほどしっくりきました。
歌の録音では、共同プロデューサーの石垣健太郎から、さも意味のあるかのように感情を大きく込めて歌えとのディレクションが。
その効果はてきめんで、「意味が分からないのに何だか説得力がある」という、まるでタガログ語でラヴソングを歌っているかような仕上がりになりました。
素晴らしいミュージシャンの方々による管弦の演奏も最高のテイク。演奏トラックのデュレイションをざくざくと切っていくことで、生演奏の楽曲にもかかわらずエレクトロニック音楽のような肌触りに。
小賢しさを排除してナンセンスを求めた結果、最高の楽曲が誕生しました。