4月の週末、花冷えの小雨が降るなか、横浜・赤レンガ倉庫にある『Motion Blue YOKOHAMA』にて、中塚武と豪華メンバーによる華やかなライヴが開催された。
昨年、ディズニーの名作をスタイリッシュなジャズ・アレンジで鮮やかに蘇らせ話題となったアルバム『Disney piano jazz “HAPPINESS” deluxe editon』リリース当日に表参道・Apple Storeで行われた記念ライヴが大反響を呼び、いま再び、名立たるメンバーとともに華麗なステージをここ横浜で、あらためて披露することになった。
夕刻からの1stセットは子供から大人までが世代を越えて集い、2stセットでは大人のムード漂う洗練の客層で、会場は2セットともに早くから満席に。
誰もが今か今かと待ちわびているところに登場したのは、ディズニーキャラクターに扮したミッキー中塚と共演キャストの面々。
8名全員がファンキャップをかぶってステージに現れるというユーモアたっぷりな演出に、観客はもちろん大喜びだ。
中塚のライヴではおなじみの石川周之介(Sax, Flute)、石垣健太郎(Guitar, Guiro)、鈴木郁(Drums)、寺尾陽介(Bass)が。
さらに今回は、力強くライヴを盛り立ててくれるホーンセクションとして佐久間勲(Trumpet)、茅野嘉亮(Trumpet)、五十嵐誠(Trombone)という各方面で引っ張りだこの素晴らしいプレーヤーが、今日この日のために横浜に集結したのだ。
ステージ中央のグランドピアノの前に中塚が座り、いよいよ夢いっぱいのライヴが始まる。
スタートはアルバム『HAPPINESS』でも1曲目に収録されている「It’s a Small World(小さな世界)」。
小気味よく跳ねるピアノ、トランペットの高音とサックスの心地いい響き、巧みに情緒を効かせた魅惑的なアンサンブルに、オーディエンスは早くも虜状態だ。
ブレイクを連発するホーンセクションのゴージャスな響きとパワフルにドラムが炸裂していくメインテーマは、まさに鳥肌!
軽快なディキシー風アレンジの中で奏でられる華麗なピアノプレイで魅了し、一瞬にして聴衆の心をわしづかみにしていく。
中塚が大好きという作曲家アラン・メンケンの作品「Beauty and the Beast(美女と野獣)」に続いては、中南米の世界に迷い込んだアリスをイメージしブガルーに編曲したという「Alice In Wonderland(ふしぎの国のアリス)」だ。
中塚らしい独創的な世界観で楽しませてくれる一曲は、ギロとモントゥーノピアノで始まり、さらに鳴り響く4管のホーンセクションに手拍子も加わってラテンワールドを表現。たちまち会場全体はキューバンな熱気に。
その盛り上がりのなか、次に披露されたのは、圧倒的な「Main Street Electrical Parade」。
先月、タワーレコードとビレッジヴァンガードで限定発売されたピアノカバーのコンピレーションアルバム『PIANO MAN PLAYS DISNEY』にも収録されたこの曲は、冒頭からラストまで息もつかせない超絶技巧のピアノ、激しく疾走するホーンセクションやフルート、連続するブレイクに、観客の誰もが圧倒させられっぱなしだった。
ここでいったんホーンセクションはお休みし、中塚のオリジナルを3曲ほど披露。
茶目っ気たっぷりにルーパーを使ってみせ、客席からの笑いを誘う中塚。通常のライヴ同様、場をぐっと温かく和ませていく。
「冷たい情熱」をキレよく歌い上げ、「トキノキセキ」は甘く切なく聴かせ、そして「虹を見たかい」では客席からの手拍子も加わりより華やかに。ファンキーなリズムワークとメロウな旋律を自在に絡み合わせながら、シュールで濃厚な中塚ワールドをたっぷりと聴かせてくれた。
終盤をまず飾ったのは、中塚曰く「サングラスとモッズスーツで決めた7人の小人バージョン」という「Heigh-Ho(白雪姫)」だ。
ストイックでクールな音像と、凄まじいドラムソロに完全ノックアウト。楽器の音色が折り重なるように厚みを増してしいく、まさに大人の風格をまとった斬新なディズニーサウンドが会場を満たしていく。
全てのオーディエンスが身体じゅうでリズムを刻み、エネルギッシュなステージは最高潮を迎える。
高まったテンションはそのままに、再びホーンセクションがステージに上がると、昨年、世界中で一大センセーショナルを沸き起こした「Let It Go(アナと雪の女王)」を演奏。
メインテーマを奏でるピアノとテナーサックスの美しい音…と思いきや、次第に陽気なジャズサンババージョンへとスイッチ。中塚曰く「少しも寒くない」鮮やかなアレンジはさすがの一言!
振り幅の広さと、そのままでは決して終わらせない中塚の徹底したこだわりを肌で感じられるステージは、あっという間に本編ラストを迎えた。
「Winnie The Pooh(プーさんとハチミツ)」では冒頭から会場中に手拍子が鳴り響き、ステージはハッピームード一色に包まれる。
ポップなメロディとアップテンポなリズムにのせられ、愛嬌たっぷりのプーさんが今にも登場してきそうな気配。
フィナーレには相応しいカラフルで陽気なアレンジが、ステージを盛り上げていく。
チャーミングな音色で抑揚をつけながら、ラストまで華やかに駆け抜けた愛すべきディズニーサウンド。中塚と素晴らしいメンバーの情熱が十二分にその魅力を堪能させてくれる。
興奮と熱気が冷めやらぬまま、アンコールへ突入。その余韻をもっと味わいたいと願う観客の期待に応えるべく、締めくくりに選んだのは「When You Wish Upon A Star(ピノキオ)」と自身の楽曲「Countdown to the End of Time」をマッシュアップさせたスペシャルバージョン。
切なく静かに歌い上げるイントロから、高らかに旋律を奏でるホーンセクション。疾走感溢れるソロ回しは圧巻の極み。極上のグルーヴとパフォーマンスで会場を熱気で包みこんだ。
珠玉のディズニーサウンドを、笑いと驚きに満ちた圧倒的アレンジでたっぷりと聴かせた中塚。オーディエンスの心に深く感動を響かせた渾身のステージは、冷たい春の雨を吹き飛ばす、最高の盛り上がりのなかで締めくくられた。
次回のワンマンライヴは6月14日(日)渋谷JZ Bratで開催。
オーディエンスから募ったキーワードが新曲&オリジナルカクテルになってしまうという斬新過ぎる新企画『新曲三題噺(ばなし)』もいよいよスタート。
これまで以上にブラッシュアップされたライヴが、今から待ち遠しい!
(text by 青野ゆう / photos by 菊池陽一郎)
【ライヴレポート】TAKESHI NAKATSUKA brings “HAPPINESS”@MOTION BLUE YOKOHAMA
【ライヴレポート】ワンマンライヴ ’15/3/20@渋谷 JZ Brat
過去に幾度となくイベントをおこなってきた古巣、渋谷・セルリアンタワー内のライヴ&ダイニングクラブ『JZ Brat SOUND OF TOKYO』。
約1年ぶりにこの場所に戻った中塚武の、実はこの場所では初めてというワンマンライヴが3月20日の夜に開催された。
少し照明を落とした広いフロアと印象的な赤い壁、天井高のあるスタイリッシュな空間。足を踏み入れたと同時に、これから始まるライヴへの期待感で胸が膨らむ…そんな場所だ。
ステージ上にはグランドピアノ、ドラムセット、ベースが設置されており、これまでのプレミアムワンマンライヴとはひと味もふた味も違う、大きな存在感を放っている。
プレミアムワンマンライヴではおなじみの石垣健太郎(ギター)、石川周之介(サックス&フルート)に続き、鈴木郁(ドラム)、寺尾陽介(ベース)が登場。そして、軽やかにステージへとあがる中塚。メンバー全員が黒シャツ&白タイのモノトーンで決めている姿はいつになく新鮮。ピリっとした空気が超満員の客席にもびしびしと伝わってくる。
まずは華麗なドラムワークを響かせての先制パンチで、いきなり観客を圧倒!無料配信された「律動(リズム)」の変拍子ビートが、冒頭からオーディエンスを中塚ワールドへと一気に引き込む。
続けて『TAKEAHI LAB』で無料配信中のナンバー「苹果」では、メロウな声に力強い音が加わり、器の大きさを感じさせる楽曲を披露。
ここで、中塚から今後の活動報告を兼ねた挨拶が。
「昨年の夏からスタートした、アコースティックセットでのプレミアムワンマンライヴもひと区切り。これまでプレミアムだった企画をすべて『当たり前のこと』にするため、プレミアムという冠をあえて外しました。そんなワンマンライヴシリーズを『JZ Brat』にて再始動します!今日はその記念すべき第一回。来てくれて本当にどうもありがとう」
中塚らしい素直な言葉に続き、今回のおみやCD収録の「Johnny Murphy」を披露。曲にちなんだJZ Bratオリジナルカクテル「Johnny Murphy」を紹介するとともに、ライヴは中盤へと突入する。
その後、ルーパーを効かせた「トキノキセキ」では、楽器群の超絶技巧ともいえる絶妙な掛け合いに、これ以上ない熱気で会場が包まれる。
続けざまに放たれる「愛の光、孤独の影」「すばらしき世界」に至っては疾走感溢れるサウンドが大炸裂!
オーディエンスを完全に魅了するアップテンポなリズム。熱気を帯びた空気が、観客の手拍子とともにたちまち会場中に満ち溢れ、圧倒的な盛り上がりのなか1stステージは終了した。
今回のワンマンライヴからは、DJとして高橋マサル氏も参戦。
オープニングはもちろん、2ndステージまでの休憩の合間からイベント終了まで、コンセプチュアルで心地よい音の世界を創り出し、会場全体をひとつにつないだ。
2ndステージになると一転、メンバー全員がパリっと爽やかな白シャツと黒タイ姿に。
中塚はピアノを前に、そして榎本裕介(トロンボーン)、茅野嘉亮(トランペット)、竹村直哉(アルトサックス)のホーンセクションが新たに加わる。
サウンドは格段に華やかさを増し、歌い上げる声も力強く響く。
「It’s Your World」「虹を見たかい」では、4管とは思えぬほどのぶ厚いホーンセクションを鳴り響かせ、オーディエンスを瞬く間に圧倒していく。
続く「冷たい情熱」では、変拍子リズムに合わせた緊張感のあるフリューゲルのソロがストイックに響きながら、その空気感を保ったまま『白雪姫』の「ハイ・ホー」へと続く。昨年リリースのディズニー名曲のジャズカバーアルバム『Disney piano jazz “HAPPINESS”』からの1曲だ。
痛快かつスタイリッシュなアンサンブルが次々と繰り出され、会場全体はまさにヒートアップ状態。その興奮冷めやらぬまま「○の∞」から、本編ラストの「Countdown to the End of Time」と続く。
ビッグバンドを彷彿させる大迫力のステージにヒートアップしていく満員のオーディエンス。
たたみかけるようなアップテンポなリズム、魂を突き動かすブラスサウンド。ジェットコースター並みに展開していくハイスピードなステージは、最高潮の盛り上がりをみせながら、本編の締めくくりを迎える。
鳴り止まぬアンコールに応えて「Your Voice」を披露。スケールの大きなメロディと歌詞を感情ゆたかに歌い上げる中塚のヴォーカルは、記念すべきワンマンライヴのラストを華やかに飾る。
特別な夜の贅沢なステージは、圧巻のうちに幕を閉じた。
次回のワンマンライヴ@JZ Bratは6月14日に開催決定!
そして待望のリクエストコーナーは『新曲三題噺』として、なんと「リクエストされたキーワードから新曲+オリジナルカクテルを作ってしまう」という超強力コーナーにパワーアップして復活するとのこと。
どんなパワフルなステージが繰り広げられるのか、大いに期待しながらその日を待ちたい。
(text by 青野ゆう / photos by 菊池陽一郎&目良夏菜子)