Column

ハイパーオリンピックとその続編


コナミという会社は今でこそスポーツクラブやプロ野球のスポンサーなど、ゲームという枠からスポーツビジネスの世界に飛躍を遂げようとしていますが、そのルーツは1984年のロス五輪の一年前にリリースされて大ヒットした「ハイパーオリンピック」にあるわけです。
会社というところは、ひとたび大きいヒットを出したジャンルが「名物部署」として社内で定着するものなんですね。おそらくコナミ社内でも「スポーツはコナミ」みたいな風土がじわじわと根づいていたのではないかと。そのジャンルで次のヒット作が生まれるまで待てるだけの「懐の広さ」みたいな空気が社内に充満するんですよね。
周囲が待ってくれる、ということはそれだけ期待も大きく、必然的にプレッシャーも大きくなる訳ですね。その期待に応えたいがために、結局は安易に二匹目のドジョウを狙ってしまう。いわゆる「続編」ってヤツです。この続編というのが曲者で、最初の作品を超えるのは難しかったりするのが世の常というか無常というか。周囲は「攻めの姿勢」を期待しているのに、作り手側が「守り」に入っちゃうんですね。欲が恐怖心に変わる瞬間、すなわち、成功が失敗に変わる瞬間。
続編である「ハイパーオリンピック’84」はやっぱり非常に微妙な結果となりました。第一作に勝るとも劣らぬ優れた作品だったのですが、やっぱり攻め切れなかったんでしょう。成功体験のあとこそ、むしろその成功を捨てるくらいに強い攻めの気持ちが必要なんですね。でないと、たった一つの小さな成功に自分自身が押し潰されてしまう。
ちなみにこのシリーズで初めてカーリングというスポーツを知ったなあ。今でこそ花盛りのカーリングですが、実はゲーマーの間ではかなり以前からメジャーなスポーツでした。

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散歩コース(浅草編)

今まで国家最高機密だったのですが、僕は年に3回浅草に行くんです。5月に三社祭を遠目で見に行って(ほとんど露店の焼きそばを食べ歩くだけですが)、夏の四万六千日にほうずき市を通り過ぎに行って(買ってもまったく使い途がないからね)、11月には並木藪の新蕎麦を食べに。ていうか他の2回もけっきょく並木藪には立ち寄るんですけどね。

三社祭とかはみんなイナセな格好しててね。僕なんかが着たら似合わないだろうなあ、なんて憧れながら焼きそばを食べ続けて。人でごった返しているにもかかわらず、都心のよどんだ人混みとは空気がまったく違うんですよね。みんな笑顔だからだろうなあ。笑顔だったらどんな人混みでも気持ち良いんだ、なんて考えながらまた違う露店の焼きそばを食べて。

その3回以外でも、レコーディングが早く終わって結構良い仕上がりになって、しかも次の〆切がまだまだ先、なんていう奇跡的な日は、その奇跡を祝うためにやっぱりぶらりと浅草まで足を伸ばします。
普段の日は焼きそばの露店も無いので、まず並木藪で蕎麦をたぐって、浅草寺をお参りしてから蔵前までのんびり歩いて、地下鉄に乗って森下の「みのや」の桜鍋を食べに行ったりしてね。つまりずーっと食べてるわけです。

少し前はビールで桜鍋を小鍋仕立てで、という感じだったのですが、ビールが苦手になった今は専ら日本酒で馬刺しが嬉しくなってます。

「何だかいつも呑気な生活してるなあ」というちょっとした後ろめたさがまたお酒にほんのり苦みを与えて、「まあまあ今日は奇跡のお祝いだから」なんて自分をなぐさめながら肉をつつく。
こういう散歩はぜったいにひとりで行くべきですね。誰とも会話しないからこそ美味い酒もあるから。さすが横浜在住の引きこもり。

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2/25 Break’n Jazzライブ レポ(2)

2月25日土曜日19:00、JZ Bratに集合。
今晩のBreak’n Jazzで共演するquasimodeの後でリハーサルに入りました。
渡辺さんの楽器、ヴィブラフォンというのは持ち運びが大変で、ライブや練習の度に毎回バラバラの重い部品を組み立てなければなりません。この日も渡辺さんはroutine recordsの西崎さんと二人がかりで工具を持ち出し、土台の組み立てや鉄琴部の調整など、ほとんど大工仕事のようにトンテンカンと忙しそうです。それを眺めながら生来めんどくさがりのタケシは「たいへんだなあ」と感想をもらし、自分だったら組み立ての途中で気を失ってると思ったようです。

タケシは少年時代、元々サックスが欲しかったのですが、「手入れがめんどい」という事実を知るなりすぐに諦めてしまいました。めんどくない方向で楽器を突き詰めて行くと究極は「たて笛」になるのですが、バンドのパートにはなかなか「たて笛」を必要とする場面が無く、最終的にキーボードに落ち着きました。更に彼は「出来るだけ持ち運びに楽なキーボードを探すためならば、人生の貴重な時間をいくらかけたって構わない」という頑とした人生哲学を持っていますが、言葉のアツい響きの割にあまり立派な内容とは思えません。(彼は小学生の時も「この重いランドセルをいかにして同級生に持たせるか」という命題に熱心に取り組んでいました。尊敬する人物はジャイアンだそうです。)

滞りなくリハーサルが終了。メンバーは一旦めいめい食事などに出かけました。
今回初めてボーカリストとしてステージに立つタケシは、いつものライブと違う緊張を感じているようです。今まで何百回もライブをおこなってきた彼ですが、よし頑張ろう、と声に出して自分を奮い立たせていました。全くもって「頑張ろう」という言葉が似合わない男です。

JZ Bratに戻ると早くもお客さんが満杯で、フロアもアツくなってきています。よく見るとフロアでひときわアツく踊っているのは渡辺さんではありませんか。ライブ前にもかかわらず渡辺さんから溢れるファンクネスはどうにも止めようがありません。先ほどやや緊張を示していたタケシもライブ直前になるとすっかりいつものハイテンションに戻り、ノンアルコールなのにうるさいほどに饒舌です。

三浦さんのドラムと猪俣さんのボンゴの掛け合いから始まるやいなや、タケシが全くのアドリブでコーラスを入れます。やっぱり超アドリブ芸人・タケシ。スタジオ練習と全然違う展開でスタートしてしまいました!
渡辺さんのカウントをきっかけに曲に突入!一斉に沸き上がるオーディエンス!
曲中もタケシはアドリブ連発、我々メンバーは驚きつつ呼応しつつも「どうなっちゃうんだろう!?」と、むしろこのスリルに期待を大きくしました。
MCでは漫才コンビ「タックン・マックン」ぶりを見せつけ、饒舌な二人のベシャリを展開。
スライ&ザ・ファミリーストーン「Family Affair」、リーバイスのCMでお馴染みHipster Image「Make Her Mine」と続くと、タケシはいきなりハンドマイクになり客席にせり出すという、全く予想外の行為に躍り出ました。バンドメンバーの我々もびっくりです!オルガンはたまにしか弾かず、顔芸や振り付けとともにオーディエンスを煽動!
タケシの「スペシャルだろ〜?」のMCを待つまでもなく、あまりのスペシャルぶりに観客も驚き歓喜の嵐!渡辺さんも「ノってる!?」と、味ありまくりのMCを披露、バンドのテンションも相当上がり、勢い余って次の曲がもの凄いスピードでスタートしてしまい、慌ててタケシがアイコンタクトでテンポを下げていました。そのスピーディーな本格派4ビート、タケシの歌が始まれば何とこれはKuwata Band「スキップ・ビート」の高速ジャズカバーではないですか!
タケシはもはやオルガンの位置には戻ってこないほど完全にハンドマイクの独壇場、さっきの緊張していた姿は一体何だったのでしょう?嘘のように攻めのボーカルスタイルです!
ジャンプして曲を締めると矢継ぎ早にカウントが入り、早くもラストソングのシュガーベイブ「今日はなんだか」で場内大合唱。展開部分では「Woo!Yeah!」のオーディエンスとのかけ合い大会に。
「楽しかったのでこのスペシャルユニットのCD作ろう!」と宣言し、ライブは終了!

予想外のことだらけでしたが、中塚武+渡辺雅美の二乗されたファンキー度の凄まじさ、二人の饒舌ぶり、そしてタケシの目立ちたがりぶりが浮き彫りになった夜でした。
このユニットの今後の展開が非常に楽しみなのですが、予測不能過ぎてスタッフの我々としてはどうなっちゃうのか不安もいっぱいです。


スペシャルユニットのライブスタート!


歌うタケシ。渡辺さんも真剣そのもの。


段々ファンキー度を上げるお二人です。


いい感じにテンションが上がってきました!


タケシの鍵盤を勝手に叩く渡辺さん。お茶目!


ハンドマイク寸前のタケシ。それを期待して見てる猪俣さん(Per)。


そのまま客席に突入していくタケシ。


みんな激しくプレイ中!


まさに独壇場。

場内も大合唱!大盛り上がりです。

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家族ゲーム


僕のiPodには「食べる音」というプレイリストが入っていて、ただひたすら何かを食べている音がずっと入っているのですが、普段僕はそれをぼおぅっと聴いてるだけですぐにトランス状態に入れるんです。人に肩を揉まれた時に頭の先から感じる寒気のような気持ち良さってあるじゃないですか。あれがゾワヮ〜ッと全身に来るんですね、食べる音を聴いてるだけで。ラーメンすする音を聴いてゾワヮ〜ッ、おせんべい食べる音を聴いてゾワヮ〜ッ、みたいな調子でね。
食べる音だけでそうなる訳ではなくて、人が肩を揉まれている姿を見ているだけでも、なぜかやっぱりゾワヮ〜ッと来るんです。自分が揉まれなくても全然構わない。むしろ自分が揉まれているよりも気持ち良いんですよ。以前NYを散歩していたら路上マッサージみたいな露店があって、そこで中国人マッサージ師がマッサージしている姿を見ているだけで、一人で勝手にゾワヮ〜ッとしていました。2〜3分何もせずに他人のマッサージを立ち見している姿はちょっとヤバい人に誤解されてしまったかも知れません。あ、「本当にヤバい」とか言わないで。
「家族ゲーム」を見た人なら分かると思いますが、オープニングがいきなり朝食を食べるシーン。しかも全編とにかく食べる音がデカいんです。オープニングだけ繰り返して何度観たことか。映画もそれなりに面白かったし松田優作や伊丹十三もイイ味出してますが、そんなことはあまり関心が無くて、ただただ食事シーンの素晴らしい映画だなあと。たぶん楽しみ方間違えてますね。

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散歩コース(上野編)

普段の仕事の中では一日に別のレコーディングが2本続くことも少なくないのですが、場合によっては「お昼にレコーディングが終わって次が夜」なんてこともよくあります。横浜在住の僕の場合「ちょっと家に帰って仮眠」なんていう自分にやさしいスケジューリングも叶うわけがなく、大都会東京を一日じゅう迷子の子鹿のようにひざをガクガクさせながら彷徨うことになるわけです。
都心のまっただ中にいるだけで人混みに悪酔いしてしまうヤワな三半規管を持つ僕は、喧噪を避けて上野か浅草にひとりで散歩に出ます。
僕のおきまりのコースは、上野広小路駅から歩いてすぐ、和菓子の「うさぎや」でどら焼きと最中を買って、そのまま不忍池まで少し戻るんですね。
のんびり歩いて日差しの暖かさを肌で感じたら、池のほとりのベンチに座って、買ったばかりのどら焼きをやおら取り出してね。まだ温かい焼きたてのどら焼きをほおばりながら、さんと照っていた陽が傾いて空の色が焼けるまで、ぼぉ〜っと座ってるんです。ホントにぼぉ〜っと。たぶん口も半開きかも。
2、3時間ほど座っていると曲とかも浮かんじゃうのですが、この時に浮かんだメロディはどんなに良くても全部ボツ。五線紙メモに留めることもしません。だって面倒だから。この時ばかりはメロディよりもどら焼きがエライ。音楽は池を泳ぐ水鳥の音だけで良いんですよね。でも水鳥にどら焼きはあげません。水鳥よりも僕の方がこのどら焼きの美味しさが分かるから。
気づいたら周りは学生カップルか老夫婦ばかりで、男一人でいるのは僕か他のベンチで寝ているホームレスばかりだったりして。まあ僕も似たようなもんか、と思いながらこの日6個目のどら焼きを開け始めて。食い過ぎだっつーの。

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